ヘルニアについて😣
ヘルニアは、体内の臓器や組織が本来あるべき位置から脱出した状態を指す医学用語です。語源はラテン語の「hernia」(脱出)に由来しています。ヘルニアには様々な種類があり、それぞれ異なる症状と治療法があります。
ヘルニアの定義
ヘルニアとは、臓器や組織が何らかの原因で弱くなった体内の裂け目・孔を通って、本来の位置から脱出した状態をいいます。体壁(筋膜)のある部分が年齢とともに弱くなって孔ができ、腹圧に耐えられず、内臓が袋状になった腹膜をかぶって押し出されます。
ヘルニアの主な種類
1. 鼠径部ヘルニア(そけいぶヘルニア)
鼠径部ヘルニアは最も一般的なヘルニアで、以下の3つの種類に分類されます
1-1. 外鼠径ヘルニア(間接型・I型)
- 幼児から中高齢者まで幅広い年齢層に発症
- 鼠径管を通って腸や脂肪組織が外へ突出
- 大きくなると陰嚢まで脱出することもある
- 多くは先天性の素因による
1-2. 内鼠径ヘルニア(直接型・II型)
- 鼠径三角付近が緩んで発症
- 加齢や生活習慣の影響で組織が弱くなることが原因
- 中高齢以降の男性に多い
1-3. 大腿ヘルニア(III型)
- 足へ向かう大腿血管の内側から腸管が脱出
- 女性、特に多産の高齢女性に多い
- 最も嵌頓を起こしやすく、早急な治療が必要
2. 椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、椎間板から髄核が飛び出し、周囲の神経を圧迫することで痛みやしびれが生じる疾患です。
主な種類:
- 腰椎椎間板ヘルニア:腰痛、足の痛みやしびれが主症状
- 頚椎椎間板ヘルニア:首の痛み、肩から手にかけての痛みやしびれ
腰椎椎間板ヘルニアは、様々な要因(加齢、重労働、姿勢不良など)によって起こります。
3. その他のヘルニア
3-1. 腹壁ヘルニア
- 臍ヘルニア:へそが突出する
- 上腹部ヘルニア:腹部の真ん中の白線部分に発症
- 腹壁瘢痕ヘルニア:手術の傷から発症
- 傍ストマヘルニア:人工肛門の脇から発症
3-2. その他の希少なヘルニア
- 閉鎖孔ヘルニア:骨盤の閉鎖孔から脱出
- 食道裂孔ヘルニア:横隔膜の食道裂孔から胃が脱出
症状
共通症状
- 立ち上がる時や腹圧をかけた時の膨らみ
- 横になると消失する膨らみ
- 軽い痛みやつっぱり感
危険な症状(嵌頓)
[嵌頓ヘルニア]
嵌頓とは、脱出した内臓が戻らなくなり、血流障害を起こす危険な状態です:
- 激しい痛み
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
- 腸閉塞症状
最悪の場合、腸管壊死や腹膜炎を起こし、生命に危険が及ぶ可能性があります。
診断方法
鼠径部ヘルニアの診断
- 触診による確認
- 専門医による分類診断
椎間板ヘルニアの診断
- 症状の詳細な問診
治療法
椎間板ヘルニアの治療
保存療法
- 安静
- 理学療法
- 神経ブロック
疫学・統計
鼠径部ヘルニア
- 45歳以上:0.7%
- 60歳以上:3-4%
- 小児:3.5-5%
- 男性に多く発症するが、種類により男女差がある👱♂️
性別による違い
- 男性:外鼠径ヘルニア > 内鼠径ヘルニア > 大腿ヘルニア(稀)
- 女性:外鼠径ヘルニア > 大腿ヘルニア > 内鼠径ヘルニア(少数)
予防と生活上の注意
一般的な予防策
- 適度な運動による筋力維持
- 正しい姿勢の維持
- 重い物の持ち上げ方に注意
- 便秘の予防
- 禁煙
椎間板ヘルニア特有の注意点
- 腰部への負担軽減
- 適切な体重管理
- デスクワーク時の姿勢改善🤸♂️
受診の目安
以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします
- 鼠径部や腹部の膨らみ
- 持続する腰痛や足のしびれ
- 嵌頓を疑う激しい痛み
- 日常生活に支障をきたす症状
ヘルニアは自然治癒しない疾患であり、放置すると嵌頓などの合併症を起こす可能性があります。早期診断・早期治療により、より良い治療結果が期待できます。